食経験と食品開発


2019/4/1

食経験と食品開発



畑や、山や、海でとれたものを人が食べようとするとき、
皮をむいたり、種をとったり、焼いたり、煮たりします。
その方が、食べやすく、美味しくなりますね。
こうした調理は、美味しく食べるという目的に加え、
食べ物を安全に食べるという目的があります。
 
生の食べ物には食中毒を起こす細菌や寄生虫がいる場合があり、
そのために火を通して食べなければいけない食べ物がある。
このことは、よく知られていることです。
 
しかし、それだけではありません。
人が調理して食べている生鮮物の中には、植物が外敵から身を守るために
戦略的に毒素を持っているものもあります。
 
例えば、植物には足も翼もないので、
子孫を増やすためには動物によって種を遠くに運ばせる必要があります。
果実が、甘くておいしいのは、動物に食べさせるためです。
 
でも、種まで食べられて消化されてしまっては子孫が残せません。
だから、種はかたい殻でおおわれていたりしますが、
場合によっては種に毒を含むことで、
食べられるのを防ぐ手段が取られていることがあります。
 
あるいは、食べられても消化されないように、
消化酵素を阻害する物質を持つこともあります。
 
葉についても同じことが言えます。害虫に食べられないように、
毒や消化阻害物質を葉に蓄えることがあります。
 
その毒があまりに強ければ、
それは食べられないものとして、人々の生活から除外されていきますが、
調理によってその毒性を失わせることができるものは、食材となり得ます。
 
例えば、生の大豆には、
小腸でタンパク質を消化するためのトリプシンという酵素を阻害する物質が含まれているため、生の大豆を食べるをおなかを壊したりしますが、
大豆を煮たり焼いたりしたら、その物質は働きを失ってしまいます。
 
このような植物が持つ毒は、小さな昆虫などにとっては毒でも、
少量なら人間にとっては薬になることもあります。
そういう植物は、「薬草」になります。
 
健康食品として新たなものが次々と開発されますが、
その商品開発に新たな素材を採用しようとするときは、
それが「食経験」があるかどうかが重要な情報になります。
「食経験」とは人が食べてきた歴史のことです。
そして「食経験」とは、食べる量や調理法も含みます。
食べる量を制限したり、なんらかの調理をすることで、その素材を安全に食べてきたのかもしれないからです。

食品の新商品開発を行う際には、その素材の食べる量や調理法も含む「食経験」を十分に踏まえて商品設計を行いましょう。

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