私は1999年に今の食品開発コンサルタント業を始めたのですが、
そのきっかけになる出来事がいつくかありました。
その一つが、今から30年くらい前に、ある事業者から受けた相談です。
そのころ私はトロピカルテクノセンターという第3セクターの研究機関でバイオ関連の研究員をしていたのですが、
その前に飲料メーカーに勤めていた経験を生かして、外部の中小企業からの成分分析などを請け負う業務も担当していました。
その事業者はある独自の技術を用いて調味料のようなものを開発中でした。
相談とは、その試作品を持ってきて「これを分析して欲しい」とのこと。
ものが調味料ですから分析とは成分分析のことを言っているのだと思い、
成分にもいろいろありますが、分析して欲しい成分は何ですか?と尋ねたところ、
別のところでもそう聞かれた。何を分析したらいいかもわからないから相談に来たとの返答が返ってきました。
私は少し考えてから、
「分析したい目的は何でしょう?どうして分析したいのですか?」と尋ねました。
すると、この調味料が独特な作り方をされているので、きっと体にいいに違いないから、それを知りたい、ということでした。
つまり、体にいいということを示すデータが欲しい。それがこの相談者の方の「分析して欲しい」という言葉になって表れていたわけです。
その調味料の作り方を聴かせていただいたところ、その作り方に由来して通常の調味料よりもミネラル成分が多いだろうと予想できました。そのことを告げると、ではそのミネラルを分析してください、という風に依頼内容が具体化しました。
私は依頼通りいくつかのミネラル成分を分析し、その分析結果を相談者に見せました。一般的な調味料よりは明らかにミネラル成分が多いことがわかりました。
しかし、その相談者は分析結果を見て複雑そうな顔で沈黙しています。
しばらくしてこう口を開きました。「ミネラルが多いことはわかりました。いいことだと思います。でも、これがなぜ体にいいのかがわかりません...」
なるほど、と私は思いました。
成分分析の結果が得られただけではこの相談者の目的は達せされないのです。
私は、この調味料の試作品に特に多く含まれていたミネラルの栄養学的な役割をまとめたレポートを作成して手渡しました。そして、レポートの内容をさらに口頭でかみ砕いて説明すると、その相談者はやっと自分が開発した食品がカラダにいいということを理解し、納得してくださいました。
30年後の今、振り返ってみると当時の私のレポートが不十分であったことがわかっています。
多く含まれているミネラルの栄養学的な役割を知らせるだけでは、本当にその商品の価値があきらかになったとは言えません。
ミネラルは通常の食事や飲料水などから摂取されます。しかし現代人の食生活では不足しがちなミネラルがいくつかあります。それら不足しがちなミネラルを、この新しい調味料を用いることでどれくらい補うことができるか?そこまで調べてお伝えするべきだったと今は考えています。そこまでわかって初めて、商品の栄養学的価値が定まるわけです。
私が食品開発のコンサルタントを目指すきっかけとなった一つのエビソードです。
その数年後に、私は食品開発コンサルタントとして独立開業しました。
※このブログの内容は
ポッドキャスト「沖縄食品開発の5分間マメ知識 ここ要チェックです!」
でも聴くことができます。
支援事例
そのきっかけになる出来事がいつくかありました。
その一つが、今から30年くらい前に、ある事業者から受けた相談です。
そのころ私はトロピカルテクノセンターという第3セクターの研究機関でバイオ関連の研究員をしていたのですが、
その前に飲料メーカーに勤めていた経験を生かして、外部の中小企業からの成分分析などを請け負う業務も担当していました。
その事業者はある独自の技術を用いて調味料のようなものを開発中でした。
相談とは、その試作品を持ってきて「これを分析して欲しい」とのこと。
ものが調味料ですから分析とは成分分析のことを言っているのだと思い、
成分にもいろいろありますが、分析して欲しい成分は何ですか?と尋ねたところ、
別のところでもそう聞かれた。何を分析したらいいかもわからないから相談に来たとの返答が返ってきました。
私は少し考えてから、
「分析したい目的は何でしょう?どうして分析したいのですか?」と尋ねました。
すると、この調味料が独特な作り方をされているので、きっと体にいいに違いないから、それを知りたい、ということでした。
つまり、体にいいということを示すデータが欲しい。それがこの相談者の方の「分析して欲しい」という言葉になって表れていたわけです。
その調味料の作り方を聴かせていただいたところ、その作り方に由来して通常の調味料よりもミネラル成分が多いだろうと予想できました。そのことを告げると、ではそのミネラルを分析してください、という風に依頼内容が具体化しました。
私は依頼通りいくつかのミネラル成分を分析し、その分析結果を相談者に見せました。一般的な調味料よりは明らかにミネラル成分が多いことがわかりました。
しかし、その相談者は分析結果を見て複雑そうな顔で沈黙しています。
しばらくしてこう口を開きました。「ミネラルが多いことはわかりました。いいことだと思います。でも、これがなぜ体にいいのかがわかりません...」
なるほど、と私は思いました。
成分分析の結果が得られただけではこの相談者の目的は達せされないのです。
私は、この調味料の試作品に特に多く含まれていたミネラルの栄養学的な役割をまとめたレポートを作成して手渡しました。そして、レポートの内容をさらに口頭でかみ砕いて説明すると、その相談者はやっと自分が開発した食品がカラダにいいということを理解し、納得してくださいました。
30年後の今、振り返ってみると当時の私のレポートが不十分であったことがわかっています。
多く含まれているミネラルの栄養学的な役割を知らせるだけでは、本当にその商品の価値があきらかになったとは言えません。
ミネラルは通常の食事や飲料水などから摂取されます。しかし現代人の食生活では不足しがちなミネラルがいくつかあります。それら不足しがちなミネラルを、この新しい調味料を用いることでどれくらい補うことができるか?そこまで調べてお伝えするべきだったと今は考えています。そこまでわかって初めて、商品の栄養学的価値が定まるわけです。
私が食品開発のコンサルタントを目指すきっかけとなった一つのエビソードです。
その数年後に、私は食品開発コンサルタントとして独立開業しました。
※このブログの内容は
ポッドキャスト「沖縄食品開発の5分間マメ知識 ここ要チェックです!」
でも聴くことができます。
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