食品製造業者にとって、最近、大きな法規制環境の変化が二つありました。
一つは、食品表示法の施行に伴う食品表示のルール改訂。
もう一つは、全食品事業者を対象としたHACCPの義務化。
食品表示基準と呼ばれる新しいルールがつくられ、食品の表示は令和2年4月1日には完全にこのルールに移行しなければならないことになりました(参考 食品表示基準 経過措置期間が終了)。実際には、令和2年4月1日以降に製造される食品の表示に新しいルールが完全に適用されるので、多くの食品製造業者においては現時点でも商品パッケージの表示切り替え作業が進行している状況にあると言えます。
商品の食品表示を切り替えるということは、新しい包装容器を発注するということです。その際、包装容器を過剰に発注するのは無駄ですから、一定期間内に商品がどれくらい売れるかをある程度予測して発注量を決めます。
現在、新型コロナウイルスの状況下で売り上げが激減している企業が多く、しかも商品の今後の売上予測も立てにくい。このような状況で新しい食品表示に切り替えた包装容器を注文するというのは、経営的に厳しいものがあります。
このような状況に鑑み、食品表示基準への完全移行をしばらくの間緩和することはできないでしょうか? そういう配慮を所管行政である消費者庁には求めたいところです。
食品衛生法の改正により、令和2年6月からすべての食品事業者が「HACCPに沿った衛生管理」を導入しなければならなくなりました。
これは東京オリンピックの開催に合わせたものと言われていますが、街の飲食店やお肉屋さん、お魚屋さん、お弁当屋さん、小規模の食品加工業者に対しては緩和措置として「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」という、本来のHACCPよりは簡略化された衛生管理が義務づけられます。しかし簡略化されたとしてもその導入のためには外部の専門家による指導が必要です。営業自粛や出勤制限が要請されているこの状況で、小さな食品事業施設内でHACCPの導入作業を進めることは、まず無理と言っていいのではないでしょうか?
新型コロナウイルスの感染拡大を抑止するためにもHACCP導入は急がなければならない、という意見も出てくるかもしれませんが、ウイルス感染防止は特定かつ緊急の対策であり、HACCPは管理の仕組みの問題なので、性質が異なります。これからHACCPを導入しようとする場合、そのための諸作業や経営に係る負荷は、ウイルス対策とは別のところににかかってくるものです。
したがって、東京オリンピックも延期されたところですし、HACCP義務化の開始時期は、新型コロナウイルスの状況を踏まえて延期するなどの措置が必要だと思います。
