有限会社開発屋でぃきたん

食品開発・食品表示・食品安全
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「できる」ことの幅を広げるサポートをしたい。
その願いを沖縄風に“でぃきたん”と表現しています。

2020/8/11

産学官連携の要諦⑦

⑶ 経営戦略と産学官連携の適合性

 産学官連携が対象とする製品開発研究は、そのリスクの高さから研究費が補助金で賄われることが多い。補助金には経営者を惑わせる魔力があることを指摘しておきたい。一度補助金を利用した企業が、本来は自己資金や融資等で調達すべき資金を安易に補助金で賄おうとする感覚を身に着けてしまい、補助金申請を繰り返すようになるケースがしばしば見られる。研究開発に対する補助金は、一般に企業側の研究員等の人件費も補助対象となることが多いため、補助金活用が長引くと研究員等の人件費を自社の粗利益(売上総利益)で賄えない財務体質を助長することにもなりかねない。また、産学官連携に加わる協力企業等への委託費が過大に計上され、コア企業の経営戦略が考慮されないまま協力企業から補助金獲得の提案がなされる場合がある。あるいは、産学官連携に関わる機関の担当者が、本来は手段であるはずの産学官連携体の立ち上げ自体を目的化してしまう場合がある。産学官連携に係る経費が仮に補助金によって賄われるとしても、これに従事する社員や経営陣の稼働時間は費やされるのである。経営革新を目指す企業が産学官連携に臨む際には、自らの成長戦略や内部環境を熟慮の上、慎重な経営判断が求められる。
 一般に、企業には「我が社はどのような分野で、誰に対して、どのような価値を提供する企業であるか」という存在のドメイン(外部から認識される居場所)がある。企業の内部環境やステークホルダーは、企業ドメインと密接な関係がある。また、企業は「どの方向にどのような速度で進むべきか」という成長ベクトルを中長期の経営戦略として持っているはずである。
 例えば、ある伝統的な加工食品を製造し続けてきた企業が、自社が扱ってきた食材に現代的な保健機能があることを知り、産学官連携が組めれば補助金を使って新規な健康食品開発に取り組むことができることを知ったとする。その時に熟慮されなければならないのが、企業ドメインと成長ベクトルである。 伝統的な加工食品を製造し続けた歴史に適応して企 業の内部環境は整えられているはずであり、商品の愛用者や取引先、仕入れ元、金融機関などのステークホルダーは、伝統を実直に守り続ける企業の姿勢に好感と信頼を置いているのかも知れない。
 また、製品開発には既存市場に向けられるものと新市場に向けられるものがある(図6)。後者の開発を企画する場合は、特段の事前検討が必要である。新市場は、その企業がこれまでに経験してこなかった顧客性向や業界ニーズ、商慣習、流通チャネルおよび法規制等が参入障壁として存在する。したがって、単に製品を開発するだけでなく、これらのハードルを越えるための事業体制を構築できるか、さらには、それを実行していくためのコンセンサスとモチベーションを社内で得られるかが、決定的な問題となる。
 産学官連携に取り組もうとするとき、周囲の「学」や「官」はその計画立案や資金調達に協力を惜しまないだろう。しかし、計画が企業ドメインと成長ベクトルにフィットした戦略であるかどうかは、企業のみが判断できるのである。「学」や「官」が自社に協力してくれることは、経営者にとっては名誉なことであり嬉しくもある。補助金が獲得できるならなおさらである。その嬉しさが経営戦略との不適合に気づく目を曇らせてしまう危険が、産学官連携には潜んでいるということを指摘しておきたい。


 
南方資源利用技術研究会誌 Vol.33 No.1, 25~34, 2018
総説「沖縄県の食品産業における中小企業支援としての 産学官連携の要諦」より転載
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有限会社開発屋でぃきたん
代表取締役 照屋隆司

農学修士(農芸化学専攻)
技術経営修士(MOT専門職)
NR・サプリメントアドバイザー
産業カウンセラー

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