有限会社開発屋でぃきたん

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その願いを沖縄風に“でぃきたん”と表現しています。

2022/2/8

“熊本県産アサリ”産地偽装に思う

「熊本県産アサリ」として表示されていたアサリに外国産のアサリが混入していた疑いが濃厚ということがわかり、大きな騒ぎとなっています。報道によると昨年10~12月推計販売量は2485トンで、2020年の熊本県の漁獲量21トン。漁獲量の実に約120倍の“熊本県産”が市場に出回っていたことになります。

食料品の産地偽装は食品表示法違反になります。食品表示法では、育てて売る水産・畜産物は飼育期間が長い方を産地として表示できることになっていますが、それを示す書類も偽装されていたと報じられていました。

産地表示をめぐる問題は沖縄でも過去にありました。海ブドウや自然海塩など。シークヮーサージュースは原材料果実が外国産の異なる名称の果実が使われていたことで騒ぎになったこともありました。その後、海ブドウは養殖技術の向上により生産量が安定化に向かい、自然海塩では公正競争規約という業界基準が定められて表示の適正化が進んだり、シークヮーサージュースでは輸入果実の名称を表した商品名に修正されたものが流通するようになるなど、改善に向けた業界の取り組みがありました。

一次産品(農畜水産物)の産地偽装や品目・品種名の誤りは、それを原材料として加工食品を製造するメーカーにも多大な影響をおよぼします。以前、ある企業の清涼飲料の開発過程で、沖縄県産としてブランド価値のある原材料農産物が品薄となり調達先を探していた時に、食材卸業者から輸入物を提案されたことがありました。私はその原料作物の名称に疑問を感じたためその提案を断るよう開発担当者に助言し、結果的にその輸入原材料は使用されなかったのですが、後になってやはりその名称に問題があることがわかって、それを使用した他社の商品は回収や表示変更を余儀なくされました。



どうして、一次産品の産地偽装が後を絶たないのでしょうか?もちろん関係事業者のモラルの問題が指摘されるべきであることは言うまでもありませんが、ここではその背景について考えてみたいと思います。

産地の偽装は、差別化されたブランド産品に偽装するケースと、単純に外国産の産物を国産と偽るケースがあります。

いずれも食品表示法違反になりますが、景表法(不当景品類及び不当表示防止法)の観点でみると、前者の場合は優良誤認というタイプの不当表示と判断されますが、後者の場合は、優良誤認ではなく単に「誤認させる」タイプの不当表示となります。繰り返しますと、外国産の産品を国産と偽って表示することは法律上は「優良誤認」とは言えないということに着眼してみてください。優良誤認とは、実際のものより優良であるかのように誤認させる表示をしたという事です。外国産のものを国産と表示することが優良誤認になるとしたら、国産のほうが外国産よりも優良だと法的に判断したことになります。しかし、そのような判断に根拠がないことは明らかです。だから優良誤認ではなく単に「誤認させる表示」としての指摘を受けるのです。

何が言いたいかというと、我が国の消費・流通社会は、無根拠に国産が良くて外国産が劣るという観念を抱く傾向が強いのではないかということです。熊本産のアサリは乱獲により漁獲量が激減した経緯があるそうです。需要を満たすために足りない分が輸入されるのは当然の流れですが、外国産になるととたんに売れなくなるという背景が産地偽装の問題にはあるといわれています。

根拠もなく国産は品質が良く安心できる、外国産は品質が劣り安心できないという観念が当たり前のように広がることは、その根っこのところで無意識のナショナリズムや外国人差別とつながるものを感じてしまいます。

品種改良や生産者の工夫により国産のものが明らかに良いという産品も多くあります。また、地方の自然環境や伝統・歴史により育まれた産物もあります。そうしたものは、国産あるいは〇〇県産として差別化される根拠があります。しかし、何もかも国産がいいというのは行き過ぎではないかと思います。

また、SDGsの観点で考えるとどうでしょうか…

食糧安保の観点から自国の農業を育てたい。そのために国産品を選ぶ。という方もおられるでしょう。しかし一方で、国・地域間で行われる食糧貿易は、国際的な相互依存社会を形成する平和的経済交流とも言えるし、グローバルな所得分配の仕組みの一つとも言えると思います。

品質の良さや安心安全による食品選択は、やはりその根拠性に基づいておこなわれる。そういう流通・消費の環境がもっと整えられていくべきではないかと思います。

その方策の一つとしてGI(地理的表示)保護制度があります。地名を冠してブランド性を獲得した産品の表示を農水省が独占的に保護する制度です。沖縄では現在「琉球もろみ酢」がGI登録を実現しています。その申請作業のお手伝いをさせていただきましたが、やはり歴史と関連づいた製法や成分的特徴などを根拠に「琉球」「沖縄」という地名表示の正当性を主張することになります。

国産は安心だけれど、外国産は生産地の状況がわからないからどうしても不安だ、と言う人もいるでしょうが、どこまで疑うのかということもありますし、トレーサビリティーや安心安全の見える化を推進することが食糧行政や輸入事業者に課せられた課題なんだろうと思います。

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有限会社開発屋でぃきたん
代表取締役 照屋隆司

農学修士(農芸化学専攻)
技術経営修士(MOT専門職)
NR・サプリメントアドバイザー
産業カウンセラー

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