有限会社開発屋でぃきたん

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2024/5/20

紅麹サプリ品質事故に考えされられたこと

小林製薬の紅麹サプリによる健康被害は、現時点でいまだに原因の特定がされていないようです。

一部の青かびによって生産されるというプベルル酸が検出されたというところまでは報道されていますが、他の成分も見つかっているという報道もありました。

しかし、原因物質は何なのか、どのような経路でその物質が混入したのか?青かびによる汚染はあったのか?原因究明の調査は国の手に移っていますが、2024年5月20日の時点ではまだ、原因を特定できたという情報は報じられていません。

今回の深刻な事故を受けて、機能性表示食品の問題性が指摘されるようになりました。紅麹の事故との関係で指摘されていることは大きく分けて二つあるようです。
ひとつは、健康被害が起きたことの報告・公表までに2カ月という時間がかかり、その間に被害を拡大させたのではないかという点。
もう一つは、機能性表示食品制度においては特定保健用食品のような国の審査がなく企業からの届出によるものなので、安全性が確保されていなかったのではないかという点。

健康被害に対する報告のあり方や、安全性の確保の問題は、機能性表示食品制度の指摘されるべき問題ではありますが、この二つの問題は機能性表示食品制度だからということでなく、食品全般に言えることです。そして、今回の紅麹の事故の原因はどこにあったか、再発防止には何が必要かという点については、この議論はいささか的が外れているようにも思えます。そのことについてこれから考えを述べたいと思います。

まず、健康被害が起きたことの公表が遅れたという問題について。
これは機能性表示食品に限らず、すべての食品に共通する問題ですが、まず前提として、健康被害と特定の食品の摂取の因果関係を明らかにすることは相当な時間がかかります。したがって、「この食品が原因として疑わしい」という疑いの段階で速やかな報告・公表と製品の回収が、被害の広がりを防ぐためには決定的に重要です。
しかし、何千、何万という数の人が様々に異なるものを食べながら生活し、さまざまな原因により様々な病気にかかる状況において、どういう条件があれば「疑わしい」と判断すべきか、これを企業に判断させることはかなり難しいことのように思います。何か、「疑わしい」ということを判断するための基準やガイドライン、フローチャートのようなものを国の方で作成して普及させる必要があるのではないかと思います。
それと、疑わしい段階で公表・回収して、後に疑いが晴れた場合の信頼回復や損害補償等の救済措置も制度化する必要があるのではないかと思います。

つぎに、安全性確保に関する問題。
機能性表示食品が安全性を審査しない制度であることが指摘されていますが、食品の安全性は食品安全基本法と食品衛生法の運用で担保されるべきで、機能性表示食品制度が云々というよりも、流通する食品の安全性をどう確保するかという、もっと大きな、上流のところで対処しなればならない問題ではないかと思います。
今回の事故は、紅麹という原料素材そのもの問題ではなく、また、サプリメントの設計に問題があったわけでもありません。ある一時時期の原材料の製造工程においてイレギュラーに起きてしまった、つまり製造工程の管理の問題だと考えられます。機能性表示食品制度では安全性の審査がなく、特定保健用食品では審査がある。という比較がされていますが、ではトクホの審査を受けたらこのイレギュラーな事故の危険性が予見されたかというと、それも疑問です。また、トクホは危険を見つけてやめさせる制度ではないので、仮にトクホの審査にパスしなくても、商品は販売ができます。だから、両方の制度で一方は審査がなく、一方は審査がある。この違いが今回の健康被害の原因になっているというのは論理的には直結はしないと思います。

では、問題の本質はどこにあるかというと、サプリメントの原材料の安全管理が、企業においても、業界においても、食品安全を監督指導する行政においても、最終製品に比べるとやや手薄だったというか、危機意識の点においても最終製品に対するそれと比べると、温度差があったということは否めないような気がします。
錠剤やソフトカプセル、ハードカプセル、顆粒などの形態のサプリメントの製造は、GMP(Good Manufacturing Practice)と呼ばれる品質管理が要求されます。これは義務ではなくて、業界・マーケットが求める要求です。これを義務化すべきじゃないかという議論は以前からあります。しかし、ここが問題を理解する大事なポイントですが、健康食品は原材料の製造と製品の製造が異なる組織や工場に分業化されているのが一般的です。そしてこのGMPというのは製品の製造に適用される品質管理システムです。これだけでは原材料に起因する品質異常を管理するには不十分だと考えられます。
それで、原材料に関するGMPが提唱され運用されています。厚生労働省が平成17年に通達した「錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン」というものがあって、健康食品の原材料についてはこのガイドラインに沿って自主点検をしてくださいと。そして、これに基づいて第三者機関が点検方法を審査して認証するのがいわゆる原材料GMPといわれるもので、これの運用もされてはいます。でもこの原材料GMPというものは製品のGMPほどには普及していないように思われます。
また、GMPという管理基準があるにしても、原材料の製造方法というのは素材の種類によってその理化学的・生物的性質が違っていてそれに対応して製造方法も製造工程も多様すぎて、ガイドラインなどのようなもので管理方法を一般化するのは難しいのではないでしょうか。
小林製薬のサプリメント原料としての紅麹の製造は、やはりHACCPの手法でリスク分析を行って管理されるべきだと思いますが、果たしてそのような管理はされていたでしょうか?そこが気になるところです。
食品工場はHACCPの手法で管理することが食品衛生法で義務付けられています。人が摂取する最終形態のサプリメントは食品になりますから、それは食品製造業に該当し食品衛生行政の目の届くところにあります。ところが、原材料のみを製造する工場の場合は、原材料は食品ではありませんから、必ずしも食品製造業の許可を得ているとは限らないし、食品製造施設として認識されていなければ、その施設はHACCPの義務化の対象外になります。つまり、原材料のみを製造する工場は、食品衛生行政が目の届きにくいということです。
おそらく、この点が今後は追求されていくだろうと思います。原材料の製造工程で起こりうる危害をどう予見し、どう管理し、どう監視するかです。法制化も進むかもしれません。

ただ、今のところ世間の表層ではどちらかと言うと機能性表示食品という制度のあり方や、錠剤、カプセル等の形状のサプリメントのあり方。アメリカのようなサプリメント法の導入などに関する議論が盛んになっています。こうしたことも重要な課題ではありますので、紅麹の事故をきっかけに、これらの議論が進むということにもなるでしょう。
それはそれでいいことだと思いますが、これらのことは今回の紅麹サプリメントの事故原因との関係でみると2次的、派生的な議論です。つまり、機能性表示食品制度を見直したり、日本版サプリメント法を制定したとしても、前述した原材料製造の工程の安全管理を強化させなければ、根本的な再発防止策にはならないし、原材料製造における安全管理という課題としてみれば、機能性表示食品やサプリメントにとどまらず、加工食品全体に関係することになります。
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有限会社開発屋でぃきたん
代表取締役 照屋隆司

農学修士(農芸化学専攻)
技術経営修士(MOT専門職)
NR・サプリメントアドバイザー
産業カウンセラー

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