日本人の食事摂取基準が5年ごとに見直されます。
次回の発表は2025年ですが、その2025年版を検討した報告書案がすでに公表されており、改訂の見通しが立っています。
そこで注目されているのが、食物繊維の一日あたりの摂取目標量が引き上げられるだろう、ということです。
では「目標量」とは何でしょうか?
食事摂取基準では、栄養不足にならない為の指標として「推定平均必要量」や、あるいは摂り過ぎによる健康障害を避けるための「耐容上限量」などが設定されますが、これの指標の一つとして「目標量」が設定されます。そして、その「目標量」とは、生活習慣病の予防のために日本人が目標とすべき、一日当たりの栄養摂取量です。
ただし、すべての栄養素に目標量が設定されているわけでなく、統計学的なエビデンスに基づいてタンパク質や食物繊維、カリウムなどで設定されています。
日本人の食事摂取基準2025年版の検討会の報告書案によると、
食物繊維の目標量が設定される大きな理由として、食物繊維の摂取量が多いと
心筋梗塞、、脳卒中、循環器疾患、2 型糖尿病、乳がん、胃がん、大腸がんの発症率が低くなるという科学的な統計解析がされているそうです。
では、食物繊維の目標量はどのように引き上げられるのでしょうか?
2024年6月の現時点においては、まだ2025年版の目標量は決定していません。しかし、今年3月に公開された「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討員会に報告書案に、目標量設定の根拠となる計算値が示されています。その計算値に基づいて推測すると
18歳から64歳の成人の、食物繊維の目標量は
2020年版 男性21g以上 女性18g以上
2025年版 男性22g以上 女性18g以上
と、男性の目標量が1g上がるのではないかと予想されます。
目標量の計算は、国際的な調査に基づく信頼できる数値として、食物繊維の理想的な摂取量と、現実の日本人の平均摂取量の中間の値をベースに、この中間値に体重や年齢による補正の計算式を当てはめて算出されます。
2025年版策定検討委員会によると、その計算値が男性では22g、女性では18gに近い値となっていました。
なぜ、理想的な摂取量と現実の平均摂取量の中間値をとるかというと、
国際的な調査によって示される理想値は現実の日本人の摂取量とはかけ離れていて、理想値を目標とすることに現実性がないからです。
実現できないような理想値を目標値に掲げても意味がありません。
したがって、理想値と現状の摂取量の中間値を目標において、理想値に近づけるように頑張ろう。
ということです。
2020年版の食事摂取基準では、理想値として採用されていたのは、アメリカ・カナダの食事摂取基準として理想的とされた一日24g以上。これと、当時の日本人の栄養摂取データとの中間値をとって補正した結果、男性21g、女性18gと設定されました。
一方、2025年版の食事摂取基準の検討会では、WHOの調査に基づく25gという数値が、国際的な理想値として参考にされました。この数値と日本人の摂取量との中間値を採用するという事になったわけです。
この理想値の違いが影響して、目標量の根拠となる計算値が上がったと考えられます。
どうして、2020年度版はアメリカ・カナダの数値を参考にし、2025年度版ではWHOの数値が参考にされたのか?
それはよくわかりませんが、検討を行うときの直近の最も信頼できるデータが、WHOのデータであったということではないかと思われます。
食事摂取基準というのは、健康づくりのための重要な指標ですから、この数字が変わるということは栄養指導のあり方に影響します。
1gの違いといっても、食物繊維をもっと取りましょうという動機づけが強化されるかもしれません。
これを商品開発にどう生かすべきか?
新しいビジネスチャンスはあるのか?
2024年の今から、考えておいた方がいいいかもしれません。
支援事例