2024/7/16
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機能性表示食品制度の改正と小林サプリ事故 |
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衝撃的な小林製薬の事故を受けて令和6年4月から5月までに6回、消費者庁で「機能性表示食品を巡る検討会」が開かれ、5月下旬にその報告書が公表されました。 そして、内閣府消費者委員会のその内容が諮問にかけられ、7月12日の食品表示部会で岸田首相への答申案がほぼ固まるという状況にあります。 機能性表示食品制度の新しい基準は9月1日に施行されて、2年間の経過措置期間が設けられる見通しです。 様々な角度からの改正になりますが、今回の改正の中心となる品質管理に関する部分を抜き出して要約すると ①サプリメント形状の機能性表示食品の製造におけるGMP管理が義務化される。 ②サプリメントの原材料については、GMP管理工場で製造されることが望ましい。ただし、原材料においても製品標準書、製造管理基準書、品質管理基準書等は必須とされ、これらに適合した原材料を使用することが義務づけられる。 注)厚労省によるサプリメントGMPと原材料GMPのガイドラインは令和6年3月11日に改正されています。 ③これらの品質管理はHACCPによって管理されていることを前提とする。 消費者庁の検討委員会や消費者委員会の部会の中でも委員から結構強い指摘がありましたが、機能性表示食品の製造工場のGMP義務化だけでは小林製薬のような事故は防げない。 ここでまず、問題を理解するために整理しておきますと、 ならば、原材料の製造工程の管理強化に踏み込むのが当然だと思うのですが、そうはなっていない。 では、原材料に起因する危害の防止はどう担保するのか?については、サプリメント工場が原材料を受け入れる際に、原材料の製品標準書、言い換えれば品質規格書に合致した原材料を使用することを義務付ける。という内容になっています。 ここに、いくつか問題があります。 ①原材料の製品標準書自体が想定していない成分の混入がないことをどう保証できるのか? そこで、クロマトグラフ分析等によるパターン分析の導入が検討されていますが、他者の様々な原材料を仕入れるサプリメントメーカーが、原材料毎のパターン分析を行って管理することなんてできるのだろうか?原料メーカー側に保証させるしかないと思うのですが。 ②原材料を製造する工場に対してGMPを義務化しないということについて、そもそも小林サプリの原材料に有害な物質が混入したことは、GMPで防げるものだろうか?HACCPで防ぐべきものではないか?ということです。 GMPもHACCPも品質管理の手法ですが、思いっきりざっくりと分けると、GMPは決められた手順を厳格に守ることで品質のブレや偏りをなくそうという管理。 HACCPはそれぞれの食品の特性や事情を踏まえた固有のリスクを分析して(ハザードアナリシス)、そのリスクをなくしていくような管理方法を設計するというもの。 つまり、GMPは手順管理、HACCPはリスクマネジメントと言ってもいいかもしれません。 結論から言うと、小林サプリの事故は、原材料のHACCPに不備があった。だからそこを検証してHACCPのあり方について検討し、それに基づいた再発防止策を講じなければならない。 ということで、いま進められている機能性表示食品の基準改正ではそこに踏み込めていません。だから検討委員会の中でもHACCPの状況について十分な情報が共有されていない。 なぜこうなったのか? HACCPは食品衛生法で義務付けられているものであり、その所管は厚生労働省だからです。小林サプリは確かに機能性表示食品制度に則って販売されたものですが、事故の原因は衛生管理であって、機能性表示食品制度に原因があったわけではないのに、この問題の解決に機能性表示食品制度を管理する消費者庁や消費者委員会が表に出てしまったから、最初から的外れになる可能性をはらんでいたのだと思います。 食品を製造する工場は原則としてHACCPによる衛生管理が義務づけられています。その監督責任は厚生労働省や保健所にあります。 小林製薬は紅麹の製造施設もHACCPで管理していたと言っているようですが、青かびの混入により有害物質が生成されるというのは、HACCPで管理している工場としてはあまりにもずさんだったと言わざるを得ません。 今回の事故を受けて機能性表示食品の基準が見直されますが、これは、小林サプリの事故がなくとも、以前から性状上の問題として指摘されるとこであったと思います。ですから、事故を機会に制度がブラッシュアップされるとはいえるでしょう。 |
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