例えばウコン、フーチバー、さし草、月桃、桑の葉など、沖縄には健康に良いと言われる伝統的な農産物や、いわゆる「薬草」、が身近にあります。その葉を乾燥させて、熱湯で成分を抽出して飲む形の野草茶、薬草茶が商品として売られています。
薬草茶という表現が薬機法の関係で難しいので、商品名としては野草茶という言葉が使われることが多いです。
こういう野草茶が健康に良いことを商品のセールスポイントとしてアピールしたい。そういう相談をよく受けます。
しかし実は、こういうものの健康訴求は結構難しいです。
その理由は、熱水で抽出した液体を飲むという利用形態にあります。
健康に良いとされて、古くから民間伝承的に利用されてきた野草や薬草に含まれる成分には、水に溶けるものと水に溶けないものがあるからです。
たとえばウコンに含まれる体にいいと言われる成分はクルクミンという物質ですが、クルクミンは油性の物質なので熱いお湯を注いでもわずかにしか抽出されません。クルクミンを接種したければウコンそのものを摂ったほうがいいのです。
野草・薬草・健康野菜にはビタミンが豊富に含まれていることが多いですが、お茶の形で摂取できるビタミンは水溶性ビタミンに属するもので、ビタミンB群とビタミンCです。ビタミンA,ビタミンD,ビタミンE,ビタミンKは水に溶けないのでお茶に抽出されず、粕の方に残ってしまいます。
お茶に抽出される成分としてはミネラルやアミノ酸、ポリフェノールがあります。ただ、ミネラル、例えばカリウムやマグネシウム、カルシウムなどは水に溶けるといっても、そんなに多くは抽出されず、粕の方に多く残るでしょう。
また、ビタミンB群やビタミンC,ミネラルがお茶に抽出されたとしても、その成分がたくさん含まれているような強調表示を行うためには、国で定められた基準値があります。ほとんどの場合が、お茶に抽出されるくらいの濃度では、強調表示が認められる基準値にはなかなかな達しにくいものです。
注意しなければならないのは、茶葉そのものを成分分析するとビタミンやミネラルが豊富にふくまれていることが多いです。しかし、だからと言ってこれをお茶にして飲むと、そのごく一部しか摂取できないために、栄養強調表示ができるような含有量にはなっていないことが多いのです。
野草茶・薬草茶でアピールできる成分としてポリフェノールがあります。ポリフェノールは比較的にお茶の形態で摂取しやすい成分です。ポリフェノールは抗酸化物質としてよく知られていいるので商品のアピールにはつながるでしょう。しかし、具体的な保健機能を標ぼうするにはポリフェノールの含有量を示すだけでは難しいです。
ポリフェノールという成分名は総称です。ポリフェノールの中には、カテキンやクロロゲン酸、ケルセチンなど具体的な機能性が明らかにされているものもありますが、機能性を表示するためには、相当な含有量が必要で、やはり普通に熱水で抽出したお茶くらいでは、有意な摂取量に達しないことが多いです。なので、濃縮されたエキスを添加するなど、何らかの工夫が必要となります。
アントシアニンという赤から紫色の色素もポリフェノールの一種で、機能性があると言われますが、アントシアニンという名前自体がまた総称なので、機能性が分かっているアントシアニンもあれば機能性が分かっていないアントシアニンもあるわけです。
こういう風に言っていると、なんだか難しそうですよね。確かに、タイトルにもあるように熱水で抽出してお茶として飲むものというのは、その植物のごく一部、もっというとごくごく一部の量しか摂取できないので、健康訴求をするのは難しいのです。香りや味や色を楽しむ嗜好飲料としての価値に留まるケースが多いのではないかと思います。民間薬として用いられる薬草類は、多量の原料を熱水で長時間、高濃度になるまで抽出する、いわゆる煎じる、と言う方法をとるから、成分を多く摂取でき効果が発揮されるものです。でもこのような利用法は医薬品の範疇に入ってくることがあるので注意が必要です。
そういう事ですから、健康茶の健康訴求はそう簡単ではないということをご理解いただいて、商品企画の段階で成分分析茶文献調査を行うなど、健康訴求の実現性がどれくらいあるかを評価しておいた方がいいということを申し上げておきたいと思います。
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